むかし話

むかしむかしのその昔。

チャンパという国に一人の漁師が住んでおったそうな。

 

漁師には美しい妻がおり、裕福ではないが貧しくもなく、周りの人々からも信頼されて幸せに暮らしておった。

 

ある嵐の夜が明けると、漁師の家に国の大臣はじめ役人達が大勢訪ねてきおった。

大臣曰く、漁師の妻はなんとチャンパ国の祭祀王の双子の妹であった。

 

そして昨日の嵐で、東の果ての国から天竺へと運ばれる大事な水晶を乗せた船が沈没してしまったのだそうな。

 

広い海に沈んだ水晶を探すなど、常人にはおろか水軍全勢力を総動員しても不可能であろう。絶望した国王を見かねた、国王の妻である祭祀王が「私の生き別れた妹を遣わしてください」と申し出た。

 

双子の姉妹は生まれた瞬間から離れ離れであったが、不思議な力でいつも心を通わせることができた。

 

それから漁師は毎日船を沖に出し、妻が指し示す辺りを潜って水晶を探した。

しかし思いの外海は深く、漁師は難儀した。

 

漁師は隣村で評判の若い素潜り漁師に声をかけ、ともに水晶を探してくれぬかと頼んだのだった。

 

年中ふんどし姿の素潜り漁師は快くその願いを引き受け、3人で水晶を探す日々が始まった。

 

かくして見事水晶を見つけた3人は、東の果ての国の神官に請われて海を渡り、故郷の海によく似た岬に居を構えた。

 

季節になれば岬には美しい椿の花が咲き、その美しさに惚れ込んだ漁師は故郷にその実を送った。

 

 

今もベトナムの中部ダナンには椿の名を冠した島(山茶島、中国語圏では山茶花と書いて椿を意味する)が残り、対岸の東の国を見つめているとかいないとか。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%A3%E5%B1%B1

 

対岸の東の国、漁師達が移り住んだ岬は、サルタヒコと呼ばれる神様の故郷、イセと呼ばれているとかいないとか

あとダナンといえば、孫悟空伝説の発祥の地とされる、五行山と呼ばれる山があるとか…